2011年6月8日がどんなに待ち遠しかったろう。
去年から企画を進めていた横綱白鵬関の応援歌『天運』がいよいよ発売になりました。
嬉しい。その一言に尽きますが、ここまでの道のりは決して簡単なものではなかった。
満を持して。
この言葉が本当にふさわしく、僕の胸に重く響くのは、関係各位、スタッフ、そして相撲協会の広報部を始めとする親方や皆様のおかげであります。
心から感謝申し上げます。
角界を離れて9年目。離れた当初、相撲甚句を歌うことは何か相撲界を引きずっているようで嫌な時期があった。
『僕は歌手になったんだ。甚句は置いといて、イタリアのオペラチックな歌やポップスを歌って行きたい』
国技館に行くことも避けた。
しかし。しかし。
一般のお客様から聞こえる言葉は…『相撲甚句が聴きたい』
スタッフからは…『甚句を歌う大至が一番かっこいい』と。
悩みました。
それと同時に角界はスキャンダル続き。
僕が引退してから今日まで本当にいろんな問題が、ワイドショーや週刊誌を沸かせた。土俵の上で沸く話ではなく、土俵の外の話しばかり。
相撲から離れたい僕はなぜか心が痛んだ。
ステージを勤めているそばから、お客様には…
『大至!相撲の話しを聞かせろ!』と。
そして『甚句歌え。。。』と。
僕から相撲は消える事はないんだと実感した日々が続く。そして挙句の果ては仕事のキャンセル。
これは辛かった。
『大至は相撲のイメージが強い。今、騒がれている角界のイメージが悪く、今回のイベントには不向きです。よってキャンセルさせてください。』
などなど。1つや2つではなかった。
そこで思い返し…やはり自分から、相撲は消えない。なら、いっそ相撲を応援しよう。僕から相撲を取ったら何もなくなる。よし、なら、甚句を通して相撲の魅力を語ろうじゃないか。相撲界で学んだことはこんなことです。そう、胸っを張って話そう!!!と。
お客様はくらいつくように聞いてきた。
同じような歳の子を持つ親御さんからは涙が流れた。
決して嘘を言っているわけではない。角界で経験したことを僕の言葉で話し、そして甚句を歌う。
角界がスキャンダルに巻き込まれている時も、白星を挙げるため、出世するために頑張っている未来ある力士を、OBとして応援したい。
そんな思いが芽生え、頑張れ力士。頑張れ相撲界。そして頑張れ大至。と、心で念じながらお客様に向き合ってきました。
『横綱白鵬関の応援歌を作ってほしい』
同じ事務所の小田純平さんと僕の、偶然にも共通の方からの依頼があったのが去年の最初の頃だったと思う。
それなら、オフィシャルの応援歌にして、このCDの売り上げから、小学生に生の相撲を観てもらうというチャリティはどうでしょうか…?
生の相撲を観ることで、感動することは絶対。そして、そのかっこよさに将来は力士になる子供も、大人になったら力士を応援したいという子供もいるかもしれないからと、その提案をさせていただくも、みな満場一致で賛成してくれ、早速、相撲協会様とのやりとりが始まりました。
秋場所での発売を視野に入れた去年の今頃、心わくわく感も、野球賭博事件で先延ばし。年が明け、春場所の頃に発売は…?と思いきや、八百長問題でまたまた先延ばしに。
スタッフも、僕も諦めませんでした。
事が落ち着きを見せた3月始め、発売を6月上旬に定め、CDジャケットの撮影、プロモーションビデオの撮影の予定が進められる。
20011年3月11日。早朝。宮城野部屋。
3月大阪場所の開催は見送られると発表があるも、横綱は場所がいつ始まっても良いようにと、出稽古に来ていた力士らと激しい稽古を繰り返してました。お陰で鋭気溢れる良い写真とビデオが撮れ、おまけにその日は横綱の誕生日でもありました。
今日は良い日だ!
稽古、撮影終了後、その足で、先代の押尾川親方の墓前に、その報告とこれからも見守ってもらいたいと、お墓参りに出かけ、その帰りに大地震に遭遇しました。
未曾有の自然災害は現代の人々を容赦なく飲み込み、我々の生活を一瞬にして奪って行きました。
CDの発売も先延ばしになるかな。
心配しながらも、発売までの予定は着々と企画され、桜の花満開の都内の公園でプロモーションビデオも撮影された。
その仕上がりも素晴らしいものになったと思う。
このプロモーションビデオは、インターネットのYouTubeやカラオケの映像としても流れる事も決定し、あとは発売日を待つばかりとなりました。
今月6月1日。我々は、横綱白鵬関のご協力を頂き、埼玉県加須市に避難されている、福島県双葉町の皆さんの元に、慰問させていただいた。
各お部屋を訪問させていただき、横綱とともに握手やサインをさせていただきました。手を合わせるお年寄り。横綱の顔を見て、無邪気にはしゃぐ子供さん、サインしてとすがる方々。みなさまざまですが、笑顔に溢れる方がほとんどでした。
そしてミニライブも。
そこで公の場では初めて『天 運』を歌わせてもらいました。
夢を持つこと。夢に向かって突き進むことの大切さ。
この歌を聴いて下さった皆様が、勇気づけられ、『よし!やるぞ!』とやる気を今一度出していただけるのであれば、幸いです。
横綱の応援歌ですが、僕は相撲界の、力士全部の。そして、皆さんへの応援歌と思ってます。
会場を後にする時、一人の男性が僕の元にやってきました。
『大至さんありがとう。私、頑張ってみます。』
そう言って握手してくださいました。
涙は堪えました。
もう十分頑張ってます。だからもう、頑張らなくて良いんですよ。って言いたかった。でも、その方、目を輝かせ、頑張ります。と。
嬉しかったです。ありがたかったです。
僕はこの歌が皆さんの『my favourite song』になって頂くことを希望します。
天運は、発売のこの時期を待っていてくれたんだと思います。
横綱の誕生日であり、世界的にも忘れる事の出来ない日となった3月11日に宮城野部屋に行き、撮らせてもらった写真がジャケット。満開の桜の下でプロモーションビデオを撮らせてもらったこと。僕自身もきっとこのCDを見るたび、聴くたび、大地震のことを、満開の桜を忘れないでしょう。
日本の一日も早い再生、そして我が故郷、相撲界の再生と新たな出発を心から記念し、これからも天運を心を込めて歌わせていただきます。
歌うことが僕の天運です。
精一杯頑張らせていただきます。
頑張れ力士。頑張れ相撲界。頑張れ大至。